新聞記者の成果主義
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2014/09/post-8eeb.html
市場の縮小に比べて新聞社が多すぎる問題
切込隊長のブログ面白かった。
まとめると、
- 既存の紙媒体での新聞は徐々に縮小していく。
- 他のメディアに新聞という事業を移していかざる得ない。
- 電子メディアが有望であるが、そのためにはDMP(データマネージメントプラットフォーム)事業をきちんとすべきだ。
という主張だ。確かに新聞社は徐々に紙ベースから電子ベースに軸足を移すかもしれない。切り込み隊長はその中で、
1)死ぬのは輪転機を回して印刷された新聞を配るというシステムというだけ。しっかりとした能力に裏付けられた新聞記者や、彼らの手による記事が死ぬわけではない。単純にメディアの問題。
という主張をしている。確かに記事を書く能力の必要がなくなることは無い。一方で、私が思ったのは、「新聞社」が紙ベースから電子ベースに移ったら、記者の評価(査定と呼び変えても良い)もそれに連れて変わっていくではないかということだ。
新聞記者の評価 特ダネ、特オチ以外はどんぶり勘定
電子新聞で特オチは無くなる
「特ダネ」や「特オチ」という言葉を聞いたことがあるだろうか?特ダネは、他の新聞社がまだ取り上げていない情報をすっぱ抜くこと、逆に特オチは、他の新聞社が「特ダネ」として取り上げているのに、自分たちはそのニュースを取り漏らすことだ。新聞記者は長いこと、特ダネを上げたか、あるいは特オチを作ったかで(社内で)評価されてきた。特に「特オチ」に関しては、他社が取り上げたのに自社はそれを取り上げなかったという点でずいぶんマイナス評価をされるようだ。
よくよく考えて見れば、特オチとは紙ベースの新聞だから起こることだ。印刷して1日に1-2回しか配れないという新聞の特性によって起こることだ。随時更新可能な電子新聞なら、特オチが起きづらい。電子新聞なら印刷する必要も、戸別に配る必要もないので、他社がその記事を公開しても、その一時間後に自社で情報を公開できる。つまり、特オチという概念がなくなる。そうすると特オチによって記者を評価しても意味がなくなる。
紙の新聞は、読者が何を読んでいるか分からない。
紙の新聞は、毎朝世帯ごとに配られる。新聞記者は、誰がどの記事を読んだか分からない。新聞社の誰がどの記事を読んだか分からない。つまり、新聞社が良い記事だと思っているものを読者がそう思って読んでいるか分からない。極端な言い方をすれば、特ダネだって新聞社が特ダネだと思っているかもしれないが、読者が特ダネだと思っているとは限らない。
つまり、まとめるなら、紙の新聞は読者がどの記事を読んだか知るすべはなく、そのため、記者の評価が主観的になりがちだった。その象徴が、読者が興味を持ったかどうかなど何も関係がない、特ダネ、特オチの過大評価だ。
電子の新聞は、読者の興味がわかる。
しかし、紙の新聞ではなく電子の新聞だとその様相は一変する。電子の新聞は次の特徴を持っている。
- 記事には一つ一つURLが付いていて、読者はその記事単位で読むことができる。
- 読者がどの記事を読んだか保存できるし、長期に渡って参照できる。また、興味を持ってSNSに口コミを広げたかもわかる。
実はこの2つによって、新聞社は、どの記者の記事がどの程度読まれたか、どの程度口コミをもたらしたかが分かるようになる。また、記事は記者単位で書かれるので、記事を書いた記者の評価も簡単だ。
新聞社は記者の実力を知る。
上に書いたように、紙の新聞はその特質上どの記事が読まれているか知りようがなかった。しかし電子の新聞になると、新聞社は、記者の次ような能力を知ることになる。
- PV-その記者はどのくらいページビューを稼ぐことができるか?
- 影響力-その記者の書く記事は、どのくらいSNS,Twitterで影響力を発揮できるか?
- 購買影響力、新聞記事には広告記事もある。例えば新聞紙上で、何かアイテムを紹介して、どのくらい購買に結びつくか?
- 継続PV-、新聞記事でも新しい記事だけでなく、公開して何年もたった記事をどのくらい読まれているか?
- 有料会員獲得力、現在の電子新聞は、無料会員と有料会員がいて、有料会員にならないと見られない記事がある。そのため、何人の人間を無料会員から有料会員に出来たかはひとつの指標になる。
上に書いた例は多分ほんの一例だ。読者の行動を全部とれることによって、新聞社は今まで知りようがなかった記事の価値、そしてそれを書く記者の価値を知ることができるようになる。
そしてそれは、記者の評価に使われるに様になるだろう。それが、新聞をどのように変えるかまだ分からない。でも、今までのような、特ダネ、特オチ、あとはどんぶり勘定の世界には戻れなくなるだろうと思っている。
実際、新聞記者の人にどうなのか聞いてみたい。